地球温暖化の影響で、世界の氷河が融解し続けています。氷河といえば、北極や南極をイメージする方が多いかもしれませんが、ヨーロッパ中部、カナダや、アメリカ西部にもあり、実はニュージーランドにもあります。
先月末、科学者グループがニュージーランドの氷河を上空から観測し、8時間にも及ぶ調査を行いました。その調査結果に、参加した科学者の一人、オーストラリアのモナッシュ大学、アンドリュー・マッキントッシュ教授は、
ショッキングだった
とコメントしています。
人気の観光スポット
この調査は毎年、ニュージーランド南島の南アルプス山脈にある氷河を対象に行われます。
その氷河の中でも特に、南アルプスから海面近くまで伸びている「フォックス氷河」と「フランツ・ジョセフ氷河」は、ニュージーランドを代表する氷河。
同じく南アルプスに位置する国内最高峰(3,724m)の「アオラキ(マオリ名)/マウントクック(英語名)」と並び、観光客にも人気があります。またこのエリアは、「アオラキ/マウントクック国立公園」として世界遺産にも登録されています。
観光客には、ヘリコプターで氷河上空を遊覧飛行するツアーや、実際に氷河の上を歩くことができるツアーが人気です。しかし、それも近い将来楽しむことができなくなってしまうかもしれません。
氷河は年々後退している
毎年行われている氷河の調査・観測では、氷河が毎年少なくなってきている事が明らかになっています。小さな規模の氷河は消滅しており、フォックス氷河やフランツ・ジョセフ氷河のような大きな氷河は年々融解し、後退しているそうです。
ニュージーランドのような山岳部にある氷河は、標高の高い山に降り積もった雪が、夏になっても融けず氷の塊となり、その重さで山の麓をゆっくりと流れていくことによってできます。
そのため、冬の気温が低ければ当然氷の塊は大きくなり、暖かければ氷河は後退してしまいます。
ニュージーランドは2021年に引き続き、2022年も観測史上最も暑い夏の記録を更新。この影響ももちろんありますが、氷河の融解はそれ以前から長いスパンで起こってきました。観測のたびに、科学者たちがショックを受けているそうです。
その中の1人は、氷河の減少に対し
人生観が変わるくらい、驚異的な素晴らしさを持つ、自然界のとても美しいもの(氷河)が、まるで指の間からこぼれ落ちるように消えていくのを目の当たりにしているのです。
とコメントしています。
今世紀中に世界の氷河の半分が消滅!?
地球温暖化による影響で、私たちはこれからも世界中の氷河を失い続けていくそうです。
気候変動対策の目標を達成したとしても、今世紀の終わりまでに地球上の氷河の半分が消滅するだろうという予想もあります。
それは、温暖化だけでなく異常気象も影響しています。近年はラニーニャ現象が長く続いており、海面温度や気温が平均を上回ったことも、氷河の消滅を早めています。
今年後半にかけて発生するエルニーニョ現象は気温を下げてくれると見込まれており、積雪も期待されてはいますが、氷河消滅の窮地を救うものにはならないようです。
首都ウェリントンにあるヴィクトリア大学の大学の氷河学者、ローレン・ヴァーゴ氏は、
ニュージーランド人にとって氷河は特別なもの。一時期は、国立公園に車を停めて、少し歩けば氷河にさわれていた時期がありました。それも今ではどんどん珍しくなり、険しい山まで行くか、ときには小型機を使わないと氷河に近づけないように。
とコメント。
ニュージーランド国立大気水圏研究所の主任研究員、アンドリュー・ローリー氏は
氷河の消滅は私たちの自然環境とのつながりに大きな影響を与えます。多くの人にとって氷河は遠い存在になってしまうでしょう。
と語っています。